「うちの会社、いくらで売れるんだろう」——経営者なら一度は気になるテーマ。中小運送会社の企業価値がどう算定されるのか、代表的な3つの方法を実務目線で解説します。
CHAPTER 01バリュエーションとは何か
バリュエーション(Valuation)とは、企業や事業の価値を算定すること。M&Aの譲渡価格決定・投資判断・事業承継対策など、さまざまな場面で使われます。中小運送会社の実務では、主に以下3つの方法が使われます。
- 純資産法:会社が保有する資産から負債を引いた金額
- DCF法:将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いた金額
- 類似会社比較法(マルチプル法):同業他社の取引事例から倍率で算定
中小M&A実務では「純資産法 + 営業権」の組み合わせが最も一般的です。
CHAPTER 02純資産法の計算
貸借対照表の純資産を基準に算出する方法です。
簿価純資産法
貸借対照表そのままの純資産。簡便だが、含み損益を反映しないため実態とズレがち。
時価純資産法
資産・負債を時価で再評価した純資産。運送会社では以下の項目で差が出やすい。
- 土地・建物:簿価より時価が高いケースが多い(特に都市部)
- 車両:簿価より市場価値が低いケースが多い
- 保険積立金:解約返戻金ベースに調整
- 退職給付引当金:未計上分を引き当てる
中小M&Aで基準になるのはこの時価純資産です。
CHAPTER 03営業権(のれん)の計算
営業権は「純資産を超えた会社の超過収益力」を表します。中小M&Aでは簡便に「営業利益 × 年数」で算定されるのが一般的。
年数の相場感
- 競争の激しい業界:2〜3年
- 運送業(一般貨物):3〜5年
- 参入障壁の高い業種:5〜7年
例:年商3億・営業利益1,500万円の運送会社
営業権 = 1,500万 × 3〜4年 = 4,500万〜6,000万円
ドライバー定着・大口荷主の安定・利益率の高さなどで年数倍率が上がります。
CHAPTER 04DCF法(参考)
将来の予想キャッシュフローを現在価値に割り引く方法。理論上は最も精緻ですが、中小M&Aでは使われる頻度は低めです。
計算フロー
- 5年程度の事業計画を立てる
- 年ごとのフリーキャッシュフローを見積もる
- 割引率(WACC)を決める(中小では8〜15%)
- 各年のキャッシュフローを現在価値に割引
- 継続価値を加算して合計
中小M&Aで使われにくい理由
中小企業は事業計画の精度が低く、将来予測のブレが大きい。そのため、現実には純資産法と併用して補助的に使うことが多いです。
CHAPTER 05運送会社で価格が上がる要素・下がる要素
価格が上がる要素
- 大口荷主との長期契約:5年以上の安定取引
- ドライバーの定着率:離職率10%以下が理想
- 自社車両比率:傭車依存が少ない
- 都市部の営業所立地:賃貸でも好立地は評価
- デジタル化:配車・勤怠・請求のシステム化
価格が下がる要素
- 顧客集中リスク:売上の過半が1社に依存
- 社長依存:営業・管理が全部社長
- 労務リスク:残業代未払い、社会保険未加入
- 車両の老朽化:平均車齢が10年超
- 簿外債務:退職金・税金未払いなど
自社の概算査定をする方法
専門家に依頼する前に、大まかな価格感を自分で出す方法です。
簡易計算式
概算譲渡価格 = 時価純資産 + 営業利益×3
ステップ
- 最新の決算書から純資産を確認
- 土地・建物・車両・保険積立金を時価調整(顧問税理士に相談)
- 直近3期の営業利益の平均を算出
- 上記計算式に当てはめる
これはあくまで目安で、実際の査定は業種特有の論点を加味したより緻密な算定になります。M&A仲介会社の無料相談では、より実際に近い金額を試算してくれます。
FINALまとめ
バリュエーションは経営者が自社を客観視するきっかけになります。今すぐ売る予定がなくても、「いくらで売れる会社か」を知っておくと、経営判断の幅が広がります。簡易査定なら多くのM&A仲介会社が無料で対応してくれるので、一度試算してもらうのもおすすめです。